2019年11月リリースのシングルカスク・カスクストレングス。過去にソーテルヌカスクやレッドワインカスクなども飲みました。今回はマデイラカスクです。
ワインとウイスキー。価値基準の違いは何でしょうか?そもそも変な質問ですが、これに答えるとすれば、醸造酒であるワインは原料である葡萄に、蒸留酒であるウイスキーは樽熟成に多くが置かれている傾向にあると思います。
ワインでは「当たり年」という言葉があるあるように、その年の降水量や平均日照時間に恵まれて出来た葡萄は価値があり、原料をさほどいわないウイスキーは何の樽で何年熟成したかという「樽熟成」に価値が生まれます。とはいえ近年のアイラではキルホーマンの100%アイラやブルイックラディのベアバーレイなどテロワールを意識したシングルモルトウイスキー作りが再認識され、地元で栽培した二条大麦や古代品種を使用したモルトウイスキーが生産されています。
今回のキルホーマン8年はネット情報によると、アメリカのファーストフィルバーボンバレルで7年間熟成され、その後スペインのマデイラワインカスクで1年の後熟が施されたシングルモルトです。更にこれはシングルカスクのカスクストレングス55.8%でボトリングされたパワフルな一本となっています。キルホーマンのリリースは46~48%の加水タイプが多いので55.8%はなかなかでしょw
周知のとおりバーボンバレルは今やスコッチ熟成には欠かせない常連樽ですが、マデイラカスクとはどんなものか?簡単に説明すると「マデイラ・ワイン(ポルトガル語 Vinho da Madeira)とは、ポルトガルのマデイラ島で造られている酒精強化ワインである。なお、一般的なワインでは通常醸造酒に分類される酒だが、酒精強化ワインは混成酒(リキュール)に分類される酒である。したがって、当然マデイラ・ワインも混成酒である。」 wikipediaから
マデイラ島で作られる酒精強化ワインは同国のポートワイン、スペインのシェリー、イタリアのマルサラと並び「世界四大酒精強化ワイン」と呼ばれています。マデイラワインはシェリーと同じく分類があります。熟成期間をはじめ甘口から辛口など約6種類に分けられているそうです。 では試飲に。
Kilchoman Madeira finish single cask
8years 55.8% 50ppm
熟成期間 8年(2011/9/1 – 2019/10/25) 樽構成は1stフィルバーボンバレル7年とマデイラカスク1年だと思われます。
香 ブラックベリー、梅、浜辺のBBQスモーク、ハッカ、ニッキ、硝煙、潮・海風、湿った土草、オイル、ガーゼ、ゴム
味 ベリー系の甘酸っぱさが口いっぱいに広がり、IPAのような苦味そして消毒液や海藻を思わせるヨード香が重なって優しく鼻に抜ける。マデイラカスク由来と思われるダークフル―ツと奥にピリピリするジンジャースパイスが味わいを引き立てる。全体をまとめるキルホーマンらしいピートフレイバーとタンニンのグリップ感、後にビターで酸味のある余韻が長く続く。
感 主役級の二人によるの夢の共演とでも言うか笑 個性と個性が上手く噛み合った見事な味わいに舌つづみを打つ 。アイラモルトを好んで飲む人にはぜひ飲んで欲しい一本ですね!8年というやや早熟な印象をシングルカスク・カスクストレングスというパワフルなボトリングで補い、原酒の荒々しさの中にも豊かな熟成感・濃縮感を感じることができる一本です。基本熟成は1stフィルバーボンで行うキルホーマンの骨太でピーティーなキャラクターがあるからこそ、後の様々なタイプのカスクによるウッドフィニッシュでの相乗効果が生きるんだと思います。これ美味かったです!
あと先にも言ったようにマデイラワインと言っても、甘口から辛口まで細かい分類があるようで…これまた一つ勉強課題が増えましたね。今回のキルホーマンのフィニッシュ樽にはどんなタイプのマデイラワインが入っていたのでしょうか? うーむ気になります。