1770 グラスゴー シングルモルト

Shipbuilding along the Clyde  1907

GLASGOW 

15世紀の終わり頃から交易都市として栄え、1707年の合同連合後からはアメリカ貿易と西インド貿易による繁栄の機会を得たことで急速に発展した都市グラスゴー。代表的なものとしてはカリブ海の砂糖やアメリカ産のタバコなどがあり、この都市を中継してイギリス国内へ運ばれていました。18世紀後半にはグラスゴー大学で機械技師をしていたジェームス・ワットによって、それ以前の蒸気機関を大幅に改善した「ワット・エンジン」なるものが開発されるなど、工業機械の進歩によってグラスゴーは産業革命の中心都市へと変貌を遂げていきます。19世紀中頃までは綿産業が中心だった都市が、内燃機関が開発された後は繊維産業の機械化から始まり化学品、鉄鋼業、機械工業、造船業へと産業が大きく発展。1880年にはクライド川を深く掘削して港湾設備の整備がおこなわれ、キングドックとクイーンドックが完成。鉄鋼船の建造や燃費を大幅に改善した複合エンジンの開発などで世界をリードする造船都市へと成長します。第一次大戦直前の最盛期には全世界の船の20%がここグラスゴーとその近郊で建設されたものだというからその盛業ぶりが伺えます。(クイーン・メリー号やクイーン・エリザベス1、2号はグラスゴーで建造された)

QUEEN ELIZABETH 2

この1880年代という時期は、フランスでフィロキセラ害が発生した直後でした。フィロキセラによってワインの樹がほぼ全滅し、それまでイギリスでも人気だったワインおよびブランデーが大打撃を受けます。ブランデーの代わりに人々が飛びついたのが同じ蒸留酒のウイスキーでした。当時スコットランドでは法改正によりブレンデッド・ウイスキーが世に出て間もない時期。後のジョニーウォーカーやデュワーズ、そしてブキャナンズなどがウイスキー業界の主流となっていくまさに過渡期でもありました。グラスゴーはブレンデットウイスキー最大の出荷市場として栄え「ブレンデッドウイスキーの首都」とも呼ばれるまでに発展したのはこうした背景があったからです。しかし第一次世界大戦後には造船業は長期的な不況に入り、1960年頃から急速に衰退していきます。その理由として他国の造船業との競合に敗れたことや、航空機の発達によって旅客市場が大きく変わってしまったことなどがあるようです。

渡辺嘉一(中)

ジェームズ・ワットやアダ・スミス、チャールズ・レニー・マッキントッシュといった歴史における重要人物を数多く輩出してきたグラスゴー。日本で活躍した学者や実業家の中にもかつてこの地で学んだ人達がいます。例えば小説家の夏目漱石、科学者の高峰譲吉や土木技術者の渡辺嘉一、ウイスキー修業で知られる竹鶴政孝などがそうです。産業革命の心臓部として激走してきたグラスゴーの現在は「音楽・芸術・文化都市」として再起を図り、古き良き伝統と現代のスタイリッシュな文化が交差する魅力的な都市として多くの観光客で賑わっています。

1770グラスゴーシングルモルト

「1770」というブランド名は、史上初めてグラスゴーに設立されたウイスキー蒸溜所であるダンダスヒル蒸溜所(1902年に閉鎖)の創業年からとったものです。新グラスゴー蒸留所のオープンは2014年で、この地に110年ぶりに誕生したシングルモルト蒸留所として今注目を集めています。ドイツ製のハイブリットスチルを使用しているのもこの蒸留所特徴です。今回は1770シングルモルトシリーズの「2019リリース(赤)」と「NO.1リリース、ピーテッド(緑)」を試飲します。

「革新的なチームと最高の蒸留設備、最高の原料を使用し、最高級のウイスキーを造りあげる。」 by Glasgow Distillery


1770 GLASGOW SINGLE MALT 500ml 46%

ファーストフィルバーボン樽熟成後、バージンオーク樽でウッドフィニッシュ。スコットランド産高級大麦を使用しカトリーヌ湖の純水を仕込み水に使用している。グラスゴーの新しいウイスキー時代の台頭を示す1770グラスゴーシングルモルトのスタンダードタイプ。(2019リリース)

イエローゴールド

 バニラ、グレープフルーツ、青リンゴ、微かに粘土のオイル、胡椒

 苦味を伴った複合的スパイスとフルーツ飴のような甘味、口当たりも滑らかでバージンオークと思われる若いウッドフレイバーを感じる。熟成年数は5年未満といった感じですがトータルバランスは決して悪くなく、深みこそまだないものの短い熟成期間の中でウッドフィニッシュを行なったことで複雑さを生み出しています。胡椒やナツメグといった味わいが微量にあり、最後にさっぱりとしたフルーツの甘みが優しく残ります。


1770 GLASGOW SINGLE MALT (PEATED) 500ml 46%

シェリー樽熟成後、200ℓのバージンオーク樽で6ケ月のウッドフィニッシュ。グラスゴーでは初のピートウイスキーとなる1770グラスゴーシングルモルトピーテッド。スコットランド高地の香り高いヘザーリッチピートを使用し高級大麦で作られている。フェノール値は50ppm

 アンバー

 レモン、柑橘フルーツの皮、スポンジケーキ、微かに硝煙、石鹸、ゴム、バーべキューの炭

 みずみずしい口当たりに酸味のあるドライフルーツ、独特な若い木材感を伴ったきめ細かいスパイスと程よく効いたピートフレイバーが印象的。熟成感はやはりまだ少し物足りない感じはあるが、全体のバランスは悪くなく飲んでいて面白いシングルモルトです。どこか青々しい独特の香りがあり、それはヘザーを多く含んだオリジナルピート由来のものだと推測する。



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