スプリングバンク 伝統の100%フロアモルティング

 

スプリングバンク

スコットランド・キンタイア半島の先端の町キャンベルタウンは、400年以上の蒸留の歴史をもち、狭い町中に蒸留所がひしめき合うウイスキーの都でありました。しかし20世紀初頭の米国禁酒法の影響などで、30以上あった蒸留所はわずか2つにまで衰退してしまいます。生き残った蒸留所の1つであるスプリングバンクはミッチェル家による一族経営の蒸留所であり、ボトリングも自社工場で行っています。特筆すべきは現在でもフロアモルティングを100%自社で行うという稀有な酒造りを続けている蒸留所であるということ。魅力的なウイスキーを造り続けることで評価の高いスプリングバンクは、独自の伝統メゾットでつくり出す「質」に徹底的にこだわった蒸留所です。

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フロアモルティング

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まずモルティングとは、モルトウイスキーの原料となる麦芽(モルト)をつくる作業のことでそれは「大麦」から、粒中に十分な糖化酵素を発生させた「麦芽」へと変化させる工程のことをいいます。フロアモルティングとはこの作業工程を人力で行うことです。スコッチの伝統ともいえるフロアモルティングを現在でも行う蒸留所は数えるほどで、ほとんどの蒸留所は「モルトスタ―」と呼ばれる製麦屋さんにオーダーし購入しています。

フロアモルティングを簡単に説明すると、最初にスティ―プとよばれる浸麦槽に水を張り、大麦を2~3日浸すとこから始まります。ただ浸すだけではなく、時に水からあげて空気を与えるといった作業を繰り返すことで、麦芽に小さな「幼根」を発芽させるのです。

本格的な発芽は「発芽床」という広いコンクリートフロアへ大麦を移して行われます。浸麦後の大麦を発芽床に均等に広げ、木製のシャベルで人力によってたえず攪拌していきます。攪拌するのは発芽による呼吸熱を冷ますということと、新鮮な酸素を送りこむことで均等な発芽を促す必要があるためです。経験ある職人の手によって行われるフロアモルティングは大変重労働な作業なのです。

大麦は発芽することで麦芽内に糖化酵素などが働き、「糖」が最大限に蓄えられたところでモルティングは終了します。現在では少なくなったフロアモルティングを自社100%行うスプリングバンクのウイスキーは、機械とは違い原料に細部にまでこだわる職人たちの「心」がつくり出した伝統の味わいが生きているのも頷けますね。

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テイスティング

1828 年から蒸留されているスプリングバンクは、すべてのボトルに独自の軽いピーテッドモルトを使用し、ユニークな 2 回半蒸留プロセスがもたらす複雑でどっしりとしたボディが特徴です。スプリングバンクは現行では10、12、15、18、21年のボトルがリリースされています。今回はスプリングバンク10年と12年の2本を購入して飲んでみました。

スプリングバンク10年

やや明るいゴールド色でアルコール度数は46度。香りはすっきりとした洋ナシとミルキーなキャラメルに微かなピートといった感じ。口に含むと先ず舌にピリッとくるスパイシーさがあり、モルトのスッキリ引き締まった旨味とクリアな甘さがじわっと舌の上に広がります。ドライでスモーキーなフレーバも程よくあり長い余韻に変化します。さすが美味しいです◎

スプリングバンク12年 カスクストレングス

赤みを帯びた琥珀色をしたスプリングバンク12年はボトルによって度数が異なり、私が購入したものはカスクストレングス56.3度でボトリングされていました。(国内限定450本のみの販売)香りはドライいちじく、蜂蜜にピートが感じられます。口に含むとオレンジマーマレードのような上品な甘味と舌に広がるきめ細やかなスパイシーさがあり、ほんのり塩見を帯びたようなスモーキーフレーバがフルーティーな味わいとバランスよくマッチしています。フィニッシュにかけて甘やかでややドライな余韻にも満足です。芳醇という言葉は、こういった味わいのことだと再確認させられるような美味しいボトルでした。

 

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