コルノグ ジャン・ドネイ氏
フランス北西部の半島には、ブルターニュ地方で1997年にオープンしたGLANN AR MOR(グラン・アー・モー)蒸留所があります。オーナはジャン・ドネイ氏で「コルノグ(西風)」というシングルモルトを主にリリースしていたマイクロディスティラリーです。リリースしていた、というのもグランアーモー蒸留所は2015年に閉鎖しており、コルノグはもう造られていません。しかしジャン・ドネイ氏はウイスキー製造を止めたわけではなく、新たな蒸留所をオープンさせる準備を現在行っています。それはスコットランド・アイラ島に現在建設中の「ガ―トブレック蒸留所」で、時期を同じくしてオープン間近のアードナッホー蒸留所(ハンターレイン社)とどちらがアイラ島9番目の蒸留所となるか今注目が集まっています。
KORNOG SINGLE MALT
「海」はウイスキー熟成に影響を与える
ケルトの歴史・伝統をもつブルトン公国をルーツに、ブルターニュ―の海洋性気候によって育まれた「コルノグ」。ボトルにもケルティックウイスキーという文字が書かれている。それではロック ヒアとオロロソシェリーカスクをそれぞれ試飲してみます。
KORNOG ROC’H HIR
バーボンバレル 46% 700ml
色 ゴールド
香 チョコレート、甘いスモーク、バニラ
味 灰、フルーティ、コショー、燻製塩、グレープフルーツ
KORNOG OLOROSO SHERRY CASK
オロロソシェリーカスク 46% 700ml
色 アンバー
香 ドライフルーツ、焼いたアーモンド、ピート
味 アプリコット、干し葡萄、サルファリー、燻製塩
感 基本3~4年熟成でボトリングされるゴルノグは、「JIM MURRAYのWHISKY BIBLE 2016」で高い評価を得ています。確かに短熟のわりに味はしっかりとしているので、熟成環境や蒸留所のポテンシャルの高さが伺えます。コルノグの開封直後は荒々しい印象が少々ありましたが、一週間ほどでそれも落ち着き、全体像がはっきりと現れてきます。ピーテッドモルト(スコットランド産)を使用し沿岸部で熟成させてあるからでしょうか?アイラモルトのような雰囲気も持ち合わせたシングルモルトでした。長熟物があればぜひ飲んでみたい。
GLANN AR MOR蒸留所(1997-2015)
一日の内に四季があると言われる「ブルターニュ地方」はフランス北西部にあり、北側の突き出た半島の先端にブルターニュ語で「浜辺」を意味するグランアーモー蒸留所はある。パリから約3時間ほどのところにあり、ドーバー海峡に面し、厳しい寒さももつ気候風土のなかでブドウの産地というよりリンゴの産地として有名な地域です。グランアーモー蒸留所ではフランス国内から調達した大麦麦芽とスコットランドはアイラから輸入したピート麦芽をそれぞれ使用してシングルモルトが造られていた。水は地元の豊富な地下水を使用し、1500L程度の小さなオニオンシェイプの銅製蒸留器で通常よりも時間をかけゆっくりと蒸留する。これはアルコール蒸気が銅に触れる面積を多くすることで、不快な香気成分を除去しクリアで華やかな酒質を生む役割をしています。約18年の期間しか稼働しなかったマイクロディスティラリー(小規模)ですが、ウイスキーマガジン誌のアイコン・オブ・ウイスキー2010でアメリカ&スコットランド以外の蒸留所の中で、第2位に選ばれるなど、実力のある蒸留所であったことは間違いありません。新たなガ―トブレック蒸留所への興味もありますが、ジャン・ドネイ氏がブルターニュで造った貴重な作品であるコルノグがまずは飲めてよかったです。