ポットスチル がする役割とは?蒸留ってなに?

ポットスチル

ウイスキーとは何かを説明することは、簡単ではありません。製造工程を見てもとても複雑で、理解に苦しむ事が多いお酒だと思います。しかしウイスキーづくりにおいて、各工程の一つ一つは、その蒸留所の持つキャラクターを形成するに必要な作業となっていることは確かです。
ここでは蒸留工程に焦点を当ててみようと思います。さらに蒸留に使われるポットスチルという釜について、なるべくわかりやすく説明します。

ポットスチル は銅でできている


ポットスチルとは銅製の釜のことで、単式蒸留器とも呼ばれます。銅で作られている理由は、熱伝導に優れていることですぐに加熱でき、エネルギーコストが安く済むことや、硫黄化合物と銅が反応することで、不快な香気成分が除去されるという利点を持っているからです。ポットスチル下部の大きな釜になっている部分をポットと呼び、上部に向かって細く絞れた部分をネックそして、そこから大きくカーブしている筒状の部分をラインアームと呼びます。

この釜の中にモロミを投入し、加熱していくことで蒸留を行います。モルトウイスキーで言う”モロミ”とは、麦芽(モルト)を原料に甘い麦汁を作り、酵母によるアルコール発酵を終えた度数8%程度の”醸造液”のことです。

モルトウイスキーの「蒸留」とは、水とアルコールの沸点の違いを利用します。加熱コントロールによって、モロミからアルコール分を分離させて純度の高い蒸留液や香味成分を回収するのが蒸留の役割です。

加熱されたモロミはアルコール蒸気が立ち登り、釜上部のネックとラインアームを通り抜け、最後に蒸気は冷却されて、再び液化し終了します。モルトウイスキーではこの蒸留作業を通常2回行います。ちなみに一回目の蒸留を”初留”、二回目の蒸留を”再留”といい、得られた蒸留液はニューポットと呼ばれます。簡単に説明しましたが、再留後のアルコール度数は70%程度となり、その後加水され63%前後に薄めた後樽に詰められます。そして10年15年と永い眠りにつくことで琥珀色の芳醇なウイスキーへと変化していきます。

ポットスチル のかたち


ポットスチルの形は蒸留所によって異なります。オニオン型とかランタン型など、大小その他いろいろな形があり、その差異はウイスキーのキャラクターに大きく関係しています。つまりポットスチル全体の幅や高さ、釜の上部にかけての曲線に加え、太さ・細さ、そしてラインアームの角度などが影響し、モロミから蒸発したアルコール蒸気などの流動が変化することで、酒質に違いができるのです。

ポットスチル の加熱コントロール


加熱されて蒸気になったアルコール分などは、ネック部やラインアーム部で冷やされると、再度釜内へと戻ってしまう事が起こります。これを還流(かんりゅう)といい、加熱の強弱によって、この還流をコントロールすることができるそうです。それはポットスチルの形状にもよりますが、ゆっくりと加熱した場合、釜の上部と下部の温度差が大きいため、蒸気の還流が起こりやすくなり、よって軽い酒質となるそうです。逆に強火で加熱すると、釜の上下の温度差は少なくなるので還流は少なくなり重い酒質となるのです。蒸留所によって、こうした加熱コントロールは研究され、独自の個性あるモルトウイスキーが造られているのです。

現在のポットスチルの加熱法は、釜内に設置したコイル状の管に、高温の蒸気を通して加熱する方法が主流となっています。ニッカウヰスキーの余市蒸留所は、石炭による直火炊き蒸留を行っている、世界でも数少ない蒸留所の一つです。原始的な石炭直火炊き製法は、重厚で力強いモルトウイスキーとなるため人気がありますが、燃料コストも高くなる蒸留法でもあります。

ポットスチル をつくるフォーサイス社


PHOTOGRAPH BY JAMES GLOSSOP FOR THE TIMES

ポットスチルを造るメーカーといえばフォーサイス社があります。現在ではスコットランドだけではなく、日本やその他 世界中の蒸留所へポットスチルを送り出す老舗の蒸留器メーカーです。1933年スコットランド・スペイサイドに誕生したフォーサイス社は、テクノロジー、職人の技巧、専門知識などがライバルの追随を許さないほどに卓越し、銅製スチルメーカーの代名詞として、その名を広く知られています。

2016年に創業した、日本のクラフトウイスキー蒸留所として、今注目を集めている北海道の厚岸蒸留所もフォーサイス社のポットスチルを二基導入しました。伝統的な製法にこだわるのであれば、フォーサイス社のポットスチルは必要不可欠となります。形状はストレートヘッドのオニオン型ということなので、スコットランド・アイラ島のラガブーリン蒸留所などがこの形状で有名ですね。厚岸蒸留所はこれから”日本のアイラ”として、新たなポジションを確立していくのではないでしょうか。非常に楽しみです。

今回は蒸留・ポットスチルについて簡単に説明しました。最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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