エンデュアランス号

Ernest Shackleton

アーネスト・シャクルトン(1874 – 1922)は1907年に南極探検に挑んだ探検家。ウイスキーファンならご存知でしょうが、彼をリーダーとする探検隊が南極の凍土に残したウイスキー木箱が、約100年後の2006年にニュージーランドの南極歴史遺産トラストによって氷の中から発見された。このうち3本は、スコットランドにあるホワイト・アンド・マッカイの蒸留所に送られ、マスターブレンダーであるリチャード・パターソン氏の研究室で分析、そして再現に成功し「シャクルトンウイスキー」がリリースされ話題となった。確かシャクルトンは計3回南極探検に挑んでいて、氷の中で発見されたウイスキーは1907年の2回目探検に持っていったものだったと記憶している。というのも私がシャクルトンを知ったのは「エンデュアランス号」という本を読んでからだ。小説よりも専門書やドキュメンタリー・伝記などを好んで読んでいた時にたまたま見つけた本だった。

「求む男子。至難の旅。僅かな報酬。極寒。暗黒の長い日々。 絶えざる危険。生還の保証無し。成功の暁には名誉と賞賛を得る」アーネスト・シャクルトン。

これは前人未踏の南極大陸横断に挑む隊員を募った新聞記事で、まるで戦地へと向かうような言い回しだ。結果27名が隊員に抜擢。因みにこの募集で名誉と賞賛を求め集まった男は5000人いたそうだ。1914年エンデュアランス号は隊長と27名の隊員を乗せイギリスを出発。順調に南下を進めるシャクルトンと隊員へ不運が訪れる。南極大陸まであと320kmの地点で氷に阻まれまったく身動きが取れなくなってしまう。摂氏マイナス37度の極限状態でただひたすら好機を待つのだが、状況は不運の一途をたどるばかり。

隊員は寒さと餓えに苦しみ絶望の淵をさまよいながらも懸命に生きようと力をあわせる、しかし氷壁に挟まれた船はじわじわ潰され破壊されてゆく、そして大破・沈没する。船を失った隊はアザラシとペンギンを食料に南極サバイバルが幕を開ける。迫りくる多くの苦難を幾度となく乗り越えるが、いよいよ窮地に追い込まれたシャクルトンとその隊員たちは、選抜した数人の乗組員と、エンデュアランス号から降ろしていたわずか7メートルの救命艇に乗り込み救助を求めて1,500kmの決死の航海に出るという話です。「エンデュアランス号」は自然の脅威に翻弄されながらも、必死に生還しようとする探検隊が生々しく描かれ、極限状態の人間の恐ろしさが書かれた実話でもある。興味のある方は発見・再現されたボトル、マッキンレーシャクルトンと一緒に読み進めるのも楽しそうだ。

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