樽の履歴書

ウイスキーをそこそこ飲む人だったら樽についての知識が多少なりともあるはずだ。酒屋やネットなどでスコッチを調べると樽情報は気になるポイントであり、それがバーボンバレル(200ℓ)なのかシェリー樽(500ℓ)なのかで味をざっくりとイメージすることくらいはあると思う。ウイスキー熟成に使われるオーク樽は他に、フレンチオークやワイン樽、ラム樽そしてミズナラ樽などいろいろある。

樽の容量は125ℓのクォーター、200ℓのバレル、250ℓのホグスヘッド、500ℓのバットなどがあって小さい容量になればなるほど熟成スピードは加速する。これは中に詰められるニューポッドが樽の内側に触れる面積が多くなることによって樽から受ける影響が増えるからだ。さらに熟成庫のある場所や寒暖差などの条件が重なりオリジナルな熟成が進む。シングルモルトは自然風土が生み出す正直さを愉しむ酒であり、ブレンデッドは人の手によって調合され、飲みやすさ、飲み飽きなさ、口当たりなどの追求へと寄っていく傾向がある。

最近樽について調べることが多くなった。ウイスキーの熟成には切っても切り離せないオーク樽はなにかと謎だらけで、飲み手としてはもっと「樽の情報をくれ」と思ってしまうのは僕だけではないはず。樽の詳細を教えてくれるメーカーはそう多くないからだ。例えばファーストフィル・バーボンバレルという記載に元の蒸留所名もセットで欲しいし、セカンドフィル・バーボンバレルの場合にはファーストフィル時に入れたスコッチなどの情報がセットで欲しい。つまり樽の履歴がオープンな方が飲み手としては嬉しいからだ。ウイスキー樽は新樽からファーストフィルそしてサードフィルまで使用されると火入れを行い再活性化させる。リフィル樽(再活性化させた樽)となりそこからまたファースト、セカンドと熟成経験を重ねていく。

一体この樽は何歳なのか?何樽から始まりどんなウイスキーを熟成させて来たのか?、そのなかでどんな手(加工)を加えられたのか?など、ウイスキーを生み出す母体の情報があればもっといいなと思う。でも難しいことなのかもしれない。樽はそれそれ個性がありその履歴がわかったからといって、一定の答えに結びつくことはない。ただその方がより信頼性の高いものになるとは思うのだが。

少し前のことだけど、知人に勧められてウイスキーソサエティーの会員になった。SMWS(スコッチ・モルト・ウイスキーソサエティ)とは1893年にスコットランド・エディンバラに設立した世界で最初のウイスキークラブだ。(創業者ヒップ・ヒルズ)このクラブは日本も含め世界に14支部あり、トータル3万人近い会員に向け毎月140以上の蒸留所から選び抜かれた特別なウイスキーを販売している。会員制のインデペンデントボトラーといえば分かりやすいだろうか。

驚いたのは、会員限定のボトルたちに蒸留所名が記載されていないことだ。(蒸留所番号だけ記載)12色でフレーバーのタイプ分けがなされているのは分かりやすくて良いと思ったし、アーティスティックなタイトル・コメントが書かれているのもソサエティボトルの特徴だ。つまり蒸留所イメージを捨て、香り・味わいのみにコミットする楽しさがあり、同時にSMWSのポリシーをそこに感じることができるからだ。仕様はほぼ全てシングルカスクのカスクストレングス、ノンチル・ノンカラーの正直でパワフルなボトリングに僕は大満足。このソサエティーボトルを選ぶときに大きな指標となるのがこれまた「樽の情報」といえる。

例えは樽の表記にリフィルホグスヘッド/バーボン、12年熟成と書かれていたら。ホグスヘッド(250ℓ)サイズのリフィル(再活性化)バーボン樽で12年熟成されたものということがわかる。ホグスヘッドとは通常200ℓのバーボン樽を組み直して少しサイズアップさせた樽のことで、ここでイメージしてみる。リフィル樽なので熟成力は復活しているけど最初のバーボン由来の風味は無いと考え、あるとすればリフィル前に入っていた何かの原酒の風味になるのではないか。比較的シンプルなオークフレーバーで素直な12年熟成なのかなとか。逆に10年未満のものでもファーストフィル・バーボンバレルだったら若い熟成力のある樽なので7年とか8年でも上手く熟成している可能性が高い。特にファーストフィルバーボンはフルーツケーキのような甘さが生まれ、セカンドフィルになるとバニラフレーバーが特徴となるようだ。

例えば「樽の履歴」を勝手に、最初のバーボン3年、ファーストフィルからサードフィルまでトータル30年、リチャーリングして再活性化させた樽で10年と仮定してみると、43歳の樽を使って12年熟成というイメージがつく。だた履歴があることでより想像力が掻き立てられるのはマニアにとって喜ばしいことなんじゃなかろうか。ブルイックラディやハイコーストなど近年のクラフト系は事細かな情報をオープンにしてくれる職人気質なメーカーが多い気がするので、個人的にはそういうウイスキーを選んで飲みたい。issan

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