テロワールにこだわった大麦栽培をはじめ、へビリーピーテッドモルトを主体とするウイスキー造り、そして熟成からボトリングまで一貫して自社で行う農場型蒸留所キルホーマン。124年ぶりにアイラにできた新しい蒸留所は今年で稼働14年目を迎える。この蒸留所の成功は3年~5年と短期間の熟成で良質なウイスキーを造り出せたことにある。
現実的に蒸留所はオープンしてから気長に10年物を待つことは難しい。ウイスキーの製造を夢見て動き出す人達が考えを改めるのは、このスタートの難しさを知った時なのかもしれない。故ジム・スワン博士はこういった問題や、技術そして新たな試みへのアドバイザーでありウイスキー業界のコンサルタントとして世界中を飛び回る超多忙な人物であった。彼の協力のもと、素晴らしいウイスキーを生み出すに至った蒸留所は数多い。博士が関わった蒸留所の中でも、彼が好む仕事のやり方を最もよく示しているというのがキルホーマンだという。博士が考案したSTRカスクがある。
- Sheving シェービング(樽の内側を削る)
- Toasting トースティング(オークチップの火でゆっくり焼き入れ)
- Re-Charring リチャーリング(バーナーで強火で焼く)
この3つの工程で再活性化させた特別なリフィルカスクです。このキルホーマンSTRカスクは赤ワイン樽を使用しており、シェービングによって赤ワインの影響を抑え込むと同時にタンニンと不快成分の除去も行い、リチャーリング時にキャラメライズ化されるパーセンテージを落とすことで甘過ぎずスパイシーな仕上がり、パワフルでマイルドな熟成を目指した再生樽となっている。古樽と新樽の良いところがうまく調和した熟成が期待できるそうだ。
KILCHOMAN STR CASK 50% 50PPM
色 やや赤みのあるアンバー
香 燻製塩、硝酸、灰、タール、葉巻、ベリー系フルーツ、フランボアーズティー、バニラバター
味 潮を含んだ泥炭のフレイバーが最初に鼻に抜け、バターのようなオイリーさがあり、心地よい苦味を伴ったスパイスがモルトの甘味と重なって広がる。STRカスクの雑味のないマイルドな熟成感に、中盤から赤い果実の味わいがじんわりと現れ余韻となって続きます。
感 キルホーマンの骨太なピートとクリアなベリー系が融合したこのボトルは、ウッドフィニッシュものではなく、計43樽のホグスヘッドSTRカスクにエントリーされ、7年熟成を経て14500本の内840本が日本に入ってきたのは先月のこと。試飲の感想としては、STRカスクの恩恵を感じ取れる取れないの個人差はあると思いますが、不快要素の少ないすっきりしたフル―ツとキルホーマンの味わいがバランスよく楽しめる買って損はないボトル。今年で稼働14年目を迎えるキルホーマンの貯蔵する樽は13年が最長といったところ、蒸留所のラインナップでは今年リリースされた「ロッホゴルム2019エディション」に昨年の熟成年数を上回る12年と13年が贅沢に含まれているようです。気になるのでこちらも近いうちに。