アイリッシュウイスキー
アイリッシュウイスキーは17世紀以降から産業として確立し、19世紀後半には30近くの蒸留所を数えるほどに成長しました。当時はスコッチウイスキーよりもシェアを持ち、良質なポットスチルウイスキーを生産していました。そして20世紀初頭にかけて生産のピークを迎え、全盛を誇ります。その後、アメリカの禁酒法(1920-1933)の影響により市場を失うと、急激に衰退していくこととなります。加えて1919年はイギリスとの独立戦争が始まった年であり、後のアイルランド共和国と北アイルランドの分離という結果も、アイリッシュの衰退を招いた要因のひとつだといわれています。繁栄し、時代に翻弄されるかのように衰退していったアイリッシュウイスキー産業は今どうなっているのでしょうか?
30近くあった蒸留所は、1970年代半ばにはブシュミルズとミドルトンの二つが残るだけとなりました。後にクーリーという蒸留所ができて、キルべガン蒸留所が復活しますが、2010年頃までに稼働していた蒸留所は、この4つに過ぎませんでした。それが2014年の新生タラモア蒸留所の創業をきっかけに、現在は20以上に増えているとか、計画段階のものも含めると、50近くまで増える見込みとの情報も耳にしました。すごいですね!
見事に復活を遂げたアイリッシュウイスキー。その勢いは、まだまだ続きそうですね。今後のアイリッシュウイスキーに、私も注目していきたいと思います!
アイリッシュウイスキーの魅力とは?やはり、その飲みやすさではないでしょうか。銘柄にもよりますが、癖がなく、すっきりとした味わいが特徴で、初心者の方には、ぜひ飲んでいただきたいウイスキーです。飽きの来ない美味しいアイリッシュウイスキーを知ってもらうために、ここではブシュミルズという世界最古を謳うウイスキー蒸留所を、少し紹介してみたいと思います。
1608 オールド・ブシュミルズ蒸留所
この蒸留所は「世界最古」という謳い文句で知られていますが、実際に建てられたのは1784年だそうです。ラベルの1608年というのは、イングランド王ジェームス一世から、この土地に蒸留免許が与えられた年なのだそうです。世界で初めて蒸留免許が与えられた場所にある蒸留所ということになります。
北アイルランド アントリム州にあるブシュミルズ蒸留所は、当時盛んだった縫製産業の工場を改造して建てられたものでしたが、1885年に火災で焼失してしまいます。再建にはスコットランドから、チャールズ・ドイグという蒸留所設計家が呼び寄せられ、スコッチ風に建てられました。現在のアイルランドでは唯一のパコダ屋根を持ち、スコッチの蒸留所によく似た外観で知られるブシュミルズ蒸留所は、こうした事故や、度重なるオーナーの入れ替わりを経験しながら、今日まで数世紀に渡りウイスキーを作り続けて来た、歴史ある蒸留所です。
ブシュミルズこだわりのシングルモルトウイスキーは、大麦100%を原料に、伝統の3回蒸溜によって作られることで、雑味が少なく非常に口当たりが良いのが特徴です。3回蒸留と長期熟成によって磨かれたモルトウイスキーに、それぞれの樽から溶け出た香りが上品に融合しています。私もブシュミルズ蒸留所のウイスキーは、好きでよく飲むほうです。アイリッシュの中でシングルモルトシリーズにこだわった蒸留所はここだけのように思います。存在感のあるボトルデザインも好みで、飲みやすく飽きの来ない素晴らしいウイスキーだと思います。
ブシュミルズ ラインナップ
シングルモルトタイプは10年・16年・21年の三種類。ブレンデッドタイプはホワイトとブラックの二種があります。ハイボールですっきりと飲むのもよし、ロック・ストレートでゆっくりと楽しむのもお勧めです。長い間アイリッシュウイスキー産業を支えてきた、ブシュミルズのウイスキーをぜひ飲んでみましょう! 最後までお付き合いありがとうございました。
10年
ノンピート麦芽を原料に3回蒸留されるので、癖がなく万人向けの一本となっている。バーボン樽を主として10年以上熟成。モルト特有の上質な甘味と、ほのかなチョコレート風味が感じられる。入門としては最適の一本。
16年
シェリー樽とバーボン樽で、それぞれ長期熟成させた後に調合され、さらにポートワイン樽で、9ヶ月間熟成させたシングルモルトウイスキー。3樽の異なる特徴が、ひとつに融合することにより生まれる、ダークチョコやドライフルーツのような複雑で濃厚なフレーバーが楽しめる一本となっています。
21年
ブシュミルズ蒸留所のウイスキーでは一番レアな商品。毎年900ケースのみが仕込まれ、そこから商品化にふさわしいレベルの樽だけがボトリングされます。バーボン樽とシェリー樽で、長期熟成された後に調合され、さらにマデイラ樽で2年間熟成させた、贅沢なモルトウイスキーです。チョコレートやレーズンの風味が豊かで、非常にとろりとした口当たり。芳醇な味わいを楽しめる一本となっています。
ホワイトラベル(オリジナル)
入門にふさわしい一本。フルーティーで飲みやすく、口内に広がるバニラの香りが楽しめます。ブレンド用のグレーンウイスキーは新ミドルトン蒸留所のものを使用し、クリーンで軽快な飲み心地に仕上がっています。
ブラックラベル(ブラックブッシュ)
アイリッシュブレンデッドウイスキーのスタンダードとも言うべき一品。シェリーのオロロソ樽とバーボン樽で、最長7年熟成させたフルーティーなモルトをベースに、新ミドルトン蒸留所のグレーンウイスキーがブレンドされています。蜂蜜とナッツのような旨味が際立ち、なめらかな口当たりが特徴です。